ある物質を別の物質へと変えたいとき、例えば石油からプラスチックを作りたいとき、あるいは排ガス中の有害物を無害な物に変えたいようなときに、化学反応が使われます。その化学反応を少量でうまくコントロールするのが触媒の役割です。
代表的なプラスチックであるポリエチレン(PE)の製造では、触媒は生産量の僅か1/3000以下の使用量ですが、触媒の種類を変えることで高密度PEを作ったり低密度PEを作ったりすることができます。また、自動車排ガスに含まれる有害物である窒素酸化物(NOx 光化学スモッグの原因物質)や一酸化炭素・燃料の燃え残りの有機物などを浄化して無害化するために、現に私たちの自動車に触媒が搭載されています。1リットルほどの触媒で、1時間あたり3万リットル以上の排ガスを浄化することが可能です。
触媒はその使い方によっては省エネルギーにも貢献します。普通はかなりの高温高圧にしないと反応しないものでも、触媒を使うことによってある程度低温低圧でも反応させることができます。例えば、アンモニア合成法で知られるハーバー・ボッシュ法のように通常では反応しえないものを工業的に可能にした実例もあります。
このように、触媒は、実は私たちの生活を維持していく上でなくてはならないものなのですが、表舞台に現れることはあまりない縁の下の力持ちとも言えるものです。触媒工業協会は、そのようなわが国の暮らしを支えるための触媒とその関連材料を現に供給している民間会社が加盟している法人で、健全な触媒工業の発展を促進することをその目的としています。