触媒の作り方 Catalysts

 工業触媒のデザインでは目的の化学反応によって活性成分が選定され、使われる反応器の形式によって触媒の大きさや形が選ばれる。例えば固定床と呼ばれる形式では、成形された触媒が反応器の中に充填され、そこを気体または液体が流れることで触媒反応が進む。触媒の性質には物性と言われる物理的性質と活性成分の選択などの化学的性質がある。反応物が触媒粒子中の活性点に効率よく辿り着き、高い活性と選択性で目的反応が起き、且つ長い寿命を達成するためには両性質がバランスよく備わっている必要がある。

 

 触媒を作るためには図に示したように多くのステップ(単位操作)が必要で、阿弥陀くじのようにどのルートを辿ってもよく、上から下へのみならず逆向きのルートもあり得る。長い経験によって各ステップには重要な意味が見いだされ、ルートと製造条件の最適化が行われている。大きくは 1. 沈殿工程を経る 2. 混錬工程を経る 3. 含浸工程を経る作り方に分類できるであろう。

 

  1. 沈殿工程-複数の成分が均一に溶解している液のpHを変えることで沈殿物を生じさせ、不要成分を洗浄し、乾燥することで各成分が高度に混合した粉末の触媒成分が得られる。活性成分の選択には比較的自由度があるが、成形性が良いとは限らないので工夫が必要である。
  2. 混錬工程-粉末原料を練ることで混合し、水分を調整し、成形に適した状態を作る工程をいう。成分の選択など自由度は高いが、この方法で作った触媒が必ずしも十分な性能を発揮するかどうかは予測が難しい。しかし、多くの工業触媒で実例がある。
  3. 含浸工程-担体と呼ばれる基材に活性成分を担持する工程をいう。担体はメーカーからも購入できるが種類に限りがあるので、手に入らない場合は自身で調製することになる。担体の役割は複雑で、望ましい物性を得るだけではなく、化学的な働きも期待されている。含浸の手法を工夫することで、活性成分の分散度、担持位置などを制御することができる。

 

 沈殿、混錬工程の後には様々な装置を使用する成形工程があり、噴霧造粒による微粒子、圧縮成形による錠剤、押出し機による押出し状などの形状が与えられる。成形物は多孔体であり、細孔容積、細孔径分布などの細孔構造、圧壊強度、充填密度などの物性の制御が重要である。特に強度と細孔容積は相反するのでバランスをとる必要がある。最後の活性化は触媒活性成分の価数などの状態を制御する、性能に大きな影響を与える工程である。具体的には、単純な焼成の他に水素による還元、硫黄化合物による硫化、雰囲気焼成による金属の価数制御などがある。この工程は触媒が充填された反応器の中で使用開始前に行われることもある。