触媒の担体(土台)には化学的に安定し、機械的に強度もあるアルミナ(Al2O3)、シリカ (SiO2)が良く使用されています。担体自体はただの土台で反応を促す作用はないので、触媒の使用目的に応じて遷移金属(周期律表の第3族から第11族の間にある金属元素)等を担体に付ける事により性能を持たせています。例えば石油脱硫触媒には担体にモリブデン(Mo)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)と言ったレアメタルが担持されております。また、自動車の排ガス処理触媒には白金(Pt)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)と言った貴金属が担持されております。石油化学系触媒においては様々なレアメタル、レアアースが使用されております。中には遷移金属そのものが単独で触媒として成り立つケースもあります。
触媒原料になる金属類の多くの原料は海外よりの輸入に依存している状況です。輸入元は物によって様々ですが、近隣の中国からも毎年多くの原料となる金属を輸入しています。2010年に発生した尖閣諸島問題で中国の日本に対するレアアース輸出停止措置では、触媒工業においては不可欠な原料の確保がクローズアップされました。また、レアアース以外にタングステン(W)、アンチモン(Sb)、コバルト(Co)といったレアメタルは産出国が寡占状態にあり、今後の安定的な原料確保が課題とされております。 触媒原料のリサイクル状況について 触媒工業において使用されているレアメタル、レアアース、貴金属等の金属類は、貴重な資源であるため、使用済みの触媒から回収して再び原料として使用するというリサイクルが以前より行われています。例えば石油精製触媒に使用される白金(Pt)、モリブデン(Mo)、自動車排ガス処理触媒よりは白金(Pt)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)等回収リサイクルがされています。今後は原料の安定的な調達の為にもリサイクルに力を入れていくものと予想されます。
アルミナは耐熱性、耐薬品性、強度に優れ化学的、機械的に安定な材料であり、触媒に要求される安定性を確保します。また、表面積、細孔、形状の制御が比較的容易であり、両性酸化物として幅広く金属成分との親和性を有するため、反応条件に合わせてより効果的な触媒が設計できます。アルミナは無機酸化物の中でも熱伝導性が高く、発熱反応においてホットスポットが生じにくいため、より高い負荷条件下においても安定した反応を維持できます。工業製品が多種存在し、品質的にも経済的にも優れた触媒の提供が可能なアルミナは、触媒担体材料として欠かせない存在です。
一般的に触媒は、粒子が細かい方が反応基質との接触効率が高く、高い活性が得られると言われています。しかしながら、細かい粒子は、圧力損失が増加しやすい、反応系の閉塞しやすい、生成品と触媒の分離性が悪いなど、使用上その取扱いが難しい面があります。一方、触媒成分を粒子から成形する場合、成形時の処理により不純物の吸着や触媒成分の凝集がおこり活性が損なわれたり、成形に必要以上の触媒原料が必要になることがあります。担体は用途に応じて任意の形状を供することにより使用上の取扱を容易にします。また、担体は触媒成分をその表面に効率よく分散させ、また触媒成分を安定化させることにより、少ない触媒量で高い反応効率、触媒寿命を実現します。アルミナは高い耐熱性耐薬品性、熱伝導性を有するほか、適度な表面積、細孔が得られるため触媒担体として適した材料といえます。
シリカゲルは、細孔が無数に存在する、多孔体と呼ばれる材料です。 触媒担体としてのシリカゲルは、細孔の大きさ、比表面積、粒子径などが緻密に制御されており、これに触媒を固定化(担持)する事により、触媒性能向上やハンドリング性向上の目的で、主に石油化学工業分野で使用されています。
触媒には、貴金属、レアメタル等が使用されますが、反応には金属表面が大きく影響し、同時に反応場所の形、大きさも触媒活性および選択性に大きな影響を与えます。シリカゲル、アルミナ、活性炭などの多孔体材料は大きな比表面積と細孔を有し、触媒成分を高分散担持する事が可能であり、高価である触媒の効率的利用と反応場所の最適化が可能となります。したがって、触媒金属種、触媒反応に最も適した担体を選択する事が、触媒性能を左右する重要な因子となります。シリカゲル担体は、表面(細孔内表面)にシラノール基を有し、他の多孔体に比べ、比表面積、細孔径、粒子径などの制御範囲が広い事が特徴である触媒担体として広く利用されています。